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2012年2月 7日 (火)

『双調平家物語』第7巻/橋本治~その2・悪左府頼長~

さて、頼長です。

7巻冒頭には「摂関家と男色」という系図が入っていましてですね、頼長の男色の相手として7人の名前が挙がっております。当時「7人」が特別多かったのかどうか知りませんが、大河で山本耕史くんがどう演じてくれるのか非常に楽しみですね(笑)。

頼長は、藤原忠実の次男です。忠実が白河院の怒りを買って宇治に蟄居した時、まだ頼長は2歳だったそうな。

忠実の息子で、関白になっていた忠通と高陽院となった勲子は正室・師子の娘(師子は白河院最愛の中宮・賢子の異母妹でした)。頼長はその辺の若い女を母としていて、兄・忠通とはかなり年が離れています。

白河院崩御の翌年、頼長は11歳。まだ男子のない兄・忠通の猶子となっていました。嫡子でもなく、母の身分も低かったものの、「摂関家の跡継ぎ」と目されていた頼長は早くから出世します。

13歳で権中納言、15歳で権大納言、17歳で内大臣。

そして19歳で早や2児の父です。

兄の忠通には男子がない。19歳の頼長は、既に二人の男子を得た。(中略)実父忠実が内覧となり、その勢力を旧に復した以上、頼長が兄頼通の猶子となっている必要もない。後は、若き内大臣頼長へ、摂関家の長たる資格が譲られるばかりである。忠実と頼長は、それが崇徳帝御譲位の後、遅からぬ時に起こるものと思っていた。 (P158)

年取ってからできた子(と言ってもたったの42歳だが)だからか、蟄居することになる不遇の時期に生まれた子だからか、忠実は頼長を可愛がったようで、頼長はかなり傲慢というか、当時としてはかなり変わった気性の持ち主に育っています。

自身が「摂関家の後嗣」であることに絶大の自信と誇りを持ち、摂関家が朝廷を仕切るのを「本来」だと思っている。どれだけ権勢があろうと、生まれの低い者(待賢門院や美福門院)に力が宿るはずはない、そんな連中にへこへこする必要はない、と。

幼い頃は粗野だったのが途中で学問に目覚め、「学問」しか拠り所のない若い下級官吏には慕われていたようです。

で、崇徳帝から近衛帝への譲位があって、遠からず忠通から自身への「摂政」の委譲があると思っていた頼長は、新帝近衛帝の後宮へ娘を贈ります。帝に娘を奉り、その腹に皇子を得て栄える、というのが摂関家の「本来」ですからね。

「自ら断を下す」ということをしたがらぬ人達は、事態をただ先送りにした。その御世にあってただ一人、「自ら断を下す」ということばかりを望んだ内大臣頼長は、近衛帝ご元服のその時に至って、自身の養女となった娘をおそばに上げ、女御となすという未来を得た。 (P162)

帝位についた時、まだ近衛帝はたったの2歳とか3歳とかで、「入内」というような年齢ではありません。だから頼長は「帝が元服なさった暁にはなにとぞ私の娘を」と申し出て、「まぁいいけどね」という内諾をもらうのです。

一方、崇徳帝に后となる娘を贈っていた忠通。「皇太子」ではなく「皇太弟」への譲位となったことで、新帝の外戚とはなれなかったのですが、そんなことで彼はへこたれません。

父の忠実は、鳥羽院を第一と思う。そのことは動かない。しかしその御世には、第一のお立場に立たれた鳥羽院を、お動かし奉ることが可能な人物もいた。それが皇后得子である。実質主義者の忠通は、ためらうことなく、得子を選んだ。 (P164)

鳥羽院にはめられ、譲位しても何の権力も得られない崇徳院。そんな崇徳院についている要はない、と思った忠通は御世最強の立場にある得子にさっさと鞍替え。一方、奇態なる本来主義者の頼長はわざわざ崇徳院に接近。摂関家の力を過信する頼長は、「所詮成り上がり者」の得子と仲良くする気も、敬おうという気すらない。

で、「崇徳帝と仲良くなるにはどうしたらいいんだろう?」と考えた頼長は、崇徳帝の寵臣である藤原為通とまずお近づきになろうと考えます。「お近づき」=「男色」になるところがすごいですが、この時代の「男同士のお近づき」は普通にそーゆーものだったようで、頼長が特に好色だったとかそういうわけではないと…うん…たぶん……。

頼長は23歳、頼長が「得たい」と思う為通は31歳。

「寵する」とはいかなることか。頼長は卒然と理解した。寵するとは、奪うことなのである。奪われて、それを嬉とすることが、寵されることなのである。 (P171)

為通を恋い慕っていたわけではない。頼長は、為通を奪いたかっただけなのである。 (P172)

頼長は、人を求めざるをえない人の心に隠された、公理の存在を知らなかった。人は、己れの心に欠けたものを求めるのである。欠落を欠落として知らぬまま、人は、己れの欠落を他者の上に見る。 (P177)

頼長は最初、為通にあっさり拒まれます。「いずれ摂関家を継ぐ」という自負ばかり強い頼長は人とのつきあい方が下手で、口説き方もまったくわかってなくて、「天下の内大臣に迫られて断る者などいるものか」ぐらいに思ってる。

が、何しろ為通は「内大臣よりずっと上」の崇徳院に寵されてるわけで、経験浅い内大臣ごときに簡単になびく必要はないわけです。

摂関家の長たらんとする男が、自らその腕と腰によって、引き据え仕留めなければ、御世の男達は従わなくなっていた。それを知る以前、頼長は自らの膝下に跪く男達を求めていた。男達を従える力を失いつつある摂関家の後嗣――その孤立を知らぬまま、二十三歳の内大臣は、自身に屈する男達を求めていた。 (P179)

頼長は為通をきっかけにして男色の扉を開くわけですが、頼長にとってそれは「支配欲」だったのですね。そして自らは気づかずにいる「孤立」「孤独」を埋めるための手段だったのでしょう。

「本来」を振りかざし、人の心の機微、思惑を理解しない頼長は世の中からずれて激しくKYで、まさに「坊やだからさ!」という人だったと思えます。

すでに世は「摂関家全盛」の時代ではなくなっている。婿や舅の関係も変わりつつある。

忠雅を婿にとって、家成にはその婿にかしずくつもりはなかった。家成にとって、「婿にする」とは、「己が一族の一員とする」なのである。家成の時から、婿取りは、その名の示す通りのものとなった。婿とは、舅に取られるものとなったのである。 (P203)

とはいえ、「生まれがすべて」というのはまだまだ変わらない。

王朝の世に、「功ある働き」などというものは、どれほどの意味をも持たない。「働く」などということ自体が、身分卑しき者のなすべきことだからである。 (P203)

功よりも寵、そして寵よりも家格――生まれがすべてを決定する。

で、一方の兄・忠通。彼こそ現在の「摂関家の長」。藤原本流の嫡子として生まれた、貴族の中ではもっとも「生まれの良い」人間。鳥羽院そして美福門院に実権が集まる中、摂関家の長であり近衛帝の摂政でありながらも彼は、「朝廷に君臨する」ということはできていなかったのだけれど。

いかに不遇であろうとも、その与えられた立場を持ち堪えてこそ、官という本来に力は宿る。官とは、夥しく積まれた先例の集積だからである。 (P218)

人の世は思惑の集積である。人の世を動かすものは、動かしうる力を持った思惑である。人の世の勝者となるために得るものは、ただ、人の世を動かすにたる思惑だけなのである。 (P221)

実際主義者の忠通は、本来など崇めない。それは、崇めるものではなく、武器として用いるものだからである。 (P224)

いやー、なんかこういうふうに言われると忠通かっこいいんだけど、つまりは腹黒いというか、「うまく立ち回る」っていうか…。忠通と比べるとホントに頼長はバカで、「本来」「正義」を振りかざして父の寵臣成雅を処罰、父まで怒らせてしまう。

「え、父ちゃん、俺より成雅を取るの!?」

誰よりも父に愛されていると信じて疑わなかった頼長にはさぞショックだったでしょうが、それよりショックを受けてしかるべきは、忠通についに待望の男子が生まれたこと。

忠通に跡継ぎがいなかったからこそ、「次男」で「取るに足りない女」から生まれた頼長が「摂関家を継ぐ」ことになっていたわけです。頼長の「力」はすべて、そこにかかっていた。だから兄に男子が生まれることは一大事だったんだけど、どうも頼長は「だからといって何?俺が継ぐってもう決まってるんだから」と思っていたらしい。

少なくとも橋本さんの筆はそうなっているし、以後も「正義」を振りかざして狼藉を働き「悪左府」と呼ばれることになるその振る舞いを見ると、危機感のありどころが間違ってるなぁ、と。

頼長28歳、忠実70歳、清盛30歳の時、祇園社で清盛の郎等が騒ぎを起こし、頼長は忠盛、清盛父子を罰そうとする(ああ、やっと忠盛パパの名前が出てきた!中井貴一かっこよろしなぁ)。

しかし院の北面の武士である彼らを罰することは鳥羽院の面目にも及ぶ話なのだ。

それは「本来」である。頼長の主張することは正しい。しかし、院政の世において、「正しさ」とは、人の世に行われぬものであった。 (P257)

まぁ、可哀想といえば可哀想だよね、頼長…。

神社仏閣へ逃げ込んだ罪人を捕らえるため境内を血で汚し…とかはちょっと同情できる。ただ、恩赦を得て許された罪人を「そんなのおかしいだろ」って人を使って殺させる、というとこまで行くとさすがに擁護できない。

「実は危うい立場にある」という心の奥の落ち着かなさが彼をそのような極端に走らせていたのだろうけどねぇ。

近衛帝が元服して、かつての内諾通り頼長の養女は無事入内。が、一月後、美福門院の養女も入内するとの噂が立つ。「え?」と思ううちにその娘は忠通の養女となる。「え、摂関家の長の娘として入内するってこと!?」

焦る頼長は「なにとぞその娘の入内の前に我が娘の立后を!」と騒ぎ立て、無事頼長の娘は「皇后」となった。

がしかし、である。

忠通の娘は「中宮」となるのである。

えーーーーーっ!?そんな馬鹿な、こっちは何年も前から娘を女御に、って約束してもらってたのにぃ!!!

と嘆いてもあとの祭り。

そんな可能性をまったく思わなかった頼長は「ただ愚かなのである」。一人の帝に后が二人なんて、今に始まったことじゃないのに。

頼長は、自身に敵対する者がいるということが信じられなかった。歪んだ世のありようを正すのが頼長であり、頼長に倒される者があったとしても、頼長の行先を阻んで敵対する者がありうるのだということが、信じられなかった。 (P282)

どんだけ坊やなんだかね、頼長…。

忠通の勝ちが明白になって、寵した男達も頼長のもとをあっさり離れていく。

頼長の寵を得た男達の内で、頼長と共に保元の乱へと進んだ男は、この源成雅ただ一人である。 (P285)

もともと自身の力を誇示したい、という征服欲・支配欲での寵だものなー。どれだけ肌を重ねても、「慕わしさ」や「情」といったものはついぞ得られなかったんだろう。

それでもまだ父ちゃんは頼長の味方で、頼長に摂政を譲る気のない長子忠通に怒り、力ずくで「氏の長者」の地位を頼長に授けてくれる。しかしそんなことをしても所詮「藤原氏の中でのこと」。美福門院と手を組んだ忠通の朝廷での立場は揺らがず、摂政を辞した忠通は改めて関白に任ぜられる。

どう考えても忠通&美福門院の方が役者が上なんだよね。

近衛帝は虚弱で、しかし東宮は定められぬままにある。崇徳院は自身の御子の立太子を望んでいたけれど、美福門院にその気はない。近衛帝の病を崇徳院の呪詛と吹き込まれた美福門院は、自身に「恨まれる筋」が十分あるのを知るゆえにそれを信じ、崇徳院への憎悪を募らせていく。崇徳院は何も悪くないのに……。

というところで次巻へ続きます。

あとこれはおまけですが、頼長は源義朝の弟、義賢を誘って男寵を拒まれたことがあるそうです。頼長ェ…。

そしてその義朝、大河ドラマでは自分から「東国で武を磨いてきます!」と都を後にしていましたが、橋本さんの筆によると。

都なる為義は、その嫡子義朝を、あえて都には置かなかった。平直方から贈られた鎌倉の地に留め、土着の勢力との融合を図った。軟弱なる都の気風とは遠く隔たった東国の地において、新たなる武家の棟梁となる義朝の、武勇の力を育てさせた。既に為義は、都なる王城の地の空洞化を察知していたのである。 (P262)

大河ドラマの小日向文世はとてもそんな先見の明があるふうには見えませんねぇ(^^;)

 

人の心とは、「戯れ」の同義語。肝要となるのは、人の世を人の世たらしめる、間柄(なからい)という名の配置なのである。 (P132)

『双調平家物語』第7巻/橋本治~その1・美福門院得子~

大河ドラマ『平清盛』で先日登場した藤原得子(なりこ)――後の美福門院――と、男色関係を赤裸々に綴った日記で有名な藤原頼長をメインとした巻です。

「目の上のたんこぶ」だった白河院が亡くなった後、鳥羽院は「あー、やっと俺の時代が来た!」とばかりに活動し始めます。白河院の怒りを買って宇治に蟄居していた先の関白藤原忠実を呼び戻し、その娘である勲子を自分のそばへ上げる。

そもそも11年前に忠実が白河院を怒らせた原因がこの「勲子の入内」。「俺に差し出せ」と言った時には断った娘を鳥羽院(当時はまだ鳥羽帝かな?)のもとへ差し出すなんて何考えてんだ、鳥羽院のもとには俺の可愛い璋子がいるというのに!

璋子は「白河院の養女」だけれども、実の父親の身分は低い。そこへ摂関家の由緒正しい娘が来たら、璋子の立場は危うくなる。摂関家のみならず、他の家の娘だって後宮に上げることは許さん、俺の璋子一人で何が不服だ! というわけで、本来なら「女御更衣あまたさぶらいたる」はずの後宮に、女はいない。祖父白河院の愛妾と知りながら、鳥羽院は彼女で満足するほかなかったのです。

実のところ鳥羽院と璋子の間には崇徳帝以外にも4人も皇子がいて、他にたぶん皇女もいる。なんだ、仲は良かったの?と思うけれど、鳥羽院にしてみれば、「あんな年寄り(白河院)に負けるものか!」というところだったのでしょう。まぁ、他に女はいないわけですし。

璋子と鳥羽院の皇子の一人が、のちの後白河天皇です。

で、そうやって鳥羽院を抑えつけていた白河院が死んで、忠実の娘勲子はついに鳥羽院のもとへ上がる。最初に求められてから早や11年、すでに37歳になっていた勲子。彼女の美しさがどうこうということでなく、子は産んでも白河院しか愛していなかった「中宮・待賢門院」へのあてつけだったのですね。何しろ勲子は后を出す家筋、「摂関家」の娘。一方、白河院という後ろ盾をなくした璋子(待賢門院)は「下級貴族の娘」に過ぎない。

しかし璋子の中身は「女王様」です。帝王白河院に「娘」として「愛人」として惜しみない愛情を注がれ育った彼女は、人の心など解さない。

しかし西行は、その高貴なる女性が和歌の才を欠くことを知らなかった。知るよしもなかった。待賢門院は、「人と心を通わせる必然」を理解する要のなかった女なのである。 (P38)

大河ドラマでは藤木直人氏が演じておりますね、西行。

待賢門院は、鳥羽院へ背を向け奉った。鳥羽院を「敵」と断じ奉って、待賢門院は、鳥羽院のお意(こころ)によって動く御世の政事(まつりごと)そのものを「敵」としたのである。人ではなく、世のありよう――政事のありようすべてを敵に回して、人たるものの勝ちようはない。 (P99)

気ままな「女王様」待賢門院璋子は鳥羽院に許してもらおう、尽くしてよりを戻そう、などとはまったく思わず、結果、次第に忘れられていきます。

院の御所に上がった忠実の娘勲子は泰子と名を改め、後に高陽院(かやのいん)となります。橋下さんの筆によると彼女は男嫌いだったそうで、アラフォーという年齢ともあいまって鳥羽院の方もその後はほったらかしだったとか。まぁ璋子へ嫌がらせができればそれでよかったわけなので。

璋子も高陽院もどーでもよくなった鳥羽院のご寵の向かう先は。

女という複雑によってご翻弄をお受けになられておいでだった鳥羽院のご寵は、男という明快へ移ったのである。 (P63)

ははは。

さすが男色の時代でございます。

その、ご寵の移った先というのが藤原家成。大河では佐藤二朗氏が演じておられます。え、あの人が三上博史と!?とつい想像してしまいますが(笑)、鳥羽院28歳、家成24歳の時だそうな。

女という複雑より男という明快を選んで数年、32歳となった鳥羽院の前に六条流藤原の娘、得子(なりこ)が現れます。得子は家成の従姉妹です。

その時得子はまだ17歳。鳥羽院にとっては初めての若い娘です。璋子が鳥羽院のもとに上がったのも17歳だったのですが、鳥羽院にとっては「一つ年上の女」で、しかも17歳ですでに「もう何年も白河院の愛人」なんですから、「初々しい乙女」などとは口が裂けても言えません。

なので、かどうかは知りませんが、鳥羽院は得子を深く愛すようになる。

璋子の息子である崇徳帝にとっては「なぜ母上というものがありながら」なのですが、しゃーないよねー、母上は「父上というものがありながら」白河院といちゃいちゃしてた女なんだからさー。

崇徳帝はなにもご承知ではない。しかし、実の父と実の母の君がお心を通わされるところを間近にご覧じられながらお育ちになられた帝など、崇徳帝の他にはただのお一方もおいでにはならないのである。 (P104)

この時代子どもは母方で育てられるので、璋子の「実家」=白河院の御所、ということになって、崇徳帝は実の父・白河院と母・璋子がそれはそれは仲むつまじくあるのを見て育ち、その二人からたっぷり愛されて育ったわけです。表向き白河院は崇徳帝の曾祖父で、曾祖父がひ孫を可愛がっても全然おかしくないし、璋子と白河院は「養父とその娘」で親子関係(こっちから見ると白河院は崇徳帝の祖父になる)、これまた仲が良くて不思議はない。

しかし。

崇徳帝が自身の出生の秘密について「何も知らない」なんてことがあり得るのかなぁ。千年経った私たちが「それを知っている」ということは当時有名で誰かが書き残したからでしょう??? 少なくとも崇徳帝の周り、璋子や白河院の周りに侍る人間達は知っていたはずで…。幼児の頃ならともかく、十代過ぎればうすうす感づいてしまうんじゃ。

知ったら知ったでまた別の苦しみも増えるのだろうけれどねぇ。「父」鳥羽院に愛されない苦しみ、愛されないのも道理の存在である苦しみ……。

鳥羽院の寵を得た得子はまず娘を産む。その娘は皇后勲子(泰子)の養女となって内親王宣下を受ける。(得子は身分が低いので、得子の子のままだと内親王として認めてもらえないらしい。天皇の子なら誰でも尊ばれるというわけではないのだ) 内親王の母にふさわしい処遇を、ということで得子は従三位に。

そして得子23歳、ついに男御子を出産。未だ子のない崇徳帝(21歳)の養子になった御子は東宮となり、その母得子は「女御」の地位を獲得。時に鳥羽院37歳、忠実62歳、忠実の次子である頼長は20歳。

鳥羽院が御世を御掌握になるためには、忠通の力を奪わなければならない。そのためには、御子を一時的にお授けになり、後になって忠実の子頼長をお用いになる。 (P120)

えーっと、崇徳帝の関白は藤原忠実の嫡子・忠通です。忠通と頼長は異腹の兄弟で、忠通に男子がなかったため、頼長は兄忠通の猶子となっています。

で、崇徳帝の后は忠通の娘、聖子なのです。だから、得子が産んだ御子が崇徳帝の養子になるということは、聖子の養子になることでもあって、その子が天皇になればその外戚として威をふるうのは聖子の父である忠通になる。

だからこの縁組みは忠通の利になると表面的には見えるのだけれど、その裏には鳥羽院の深謀遠慮が。

崇徳帝と聖子の間に子はなく、身分の低い女との間にやっとできた御子は得子の養子になる。なんでかっていうと「身分低い女」の子のままでは親王宣下も受けられないからなんだけど、これってよく考えたら別に聖子の養子でいいわけだよね。なぜ得子のもとに取られるのかといえばそれももちろん深謀遠慮で。

鳥羽院の意志により崇徳帝は位を逐われ、得子の産んだ近衛帝が即位。得子は皇后に。近衛帝は崇徳帝の「養子」になっていたけれど、、御譲位の詔には「皇太子に譲る」ではなく「皇太弟に」となっていた。つまり新帝の後見を務める「父」は崇徳帝ではなく鳥羽院ということ。僕の時代になるんだよね、と思って譲位をうべなった崇徳帝は謀られたと。

「謀ったな、シャア!」

…いえ、何でもありません…。

新帝が「皇太弟」であるということは、崇徳帝の后・聖子の父忠通も「外戚」ではありえない。聖子の養子、つまり崇徳帝の「皇太子」としてなら忠通はその「祖父」になるが、「皇太弟」なら何の関係も持てない。

これが、さっき出てきた“そのためには、御子を一時的にお授けになり、後になって”、ということなのですね。

鳥羽院は忠通を、というか、摂関家に力を持たせたくない。自身が「御世第一の権力者」であるためには、摂関家は邪魔でしかない。もちろん、得子の産んだ子を帝位につけ、得子を「皇后」にしたい、というのが一番の願いだったのだろうけど。

いかなるご寵を得ようとも、女の序列は、その父達の序列に準ずる。立后は、摂関家の娘にしか訪れなかった。立后の諍いとは、女達の諍いではなく、女の父達の諍いだった。 (P148)

それが鳥羽院の意志によって変わる。身分の低い女、しかも後ろ盾となる父を欠いた女・得子を「皇后」にした鳥羽院。

「仁慈の敵は、愛なのである」という6巻に出て来た言葉が染みいりますね。「愛」という私心が、世のありようを狂わせていく。「天皇」という最高の地位についても、「自分の愛する女」を好きに后にはできなかった、それ以前の仕組みが果たして「正しかった」のかどうかはわからないけれど、「愛する女」を后にのぼせたそのことが、様々な波紋を生み出していく……。

得子に負け、すっかり過去の人となっていた待賢門院は45歳で死去。鳥羽院と待賢門院の間の皇子で、崇徳院にとっては「弟」(実は異父弟)になる雅仁親王(19歳、後の後白河帝)は崇徳院のもとへ。

やがて得子は、鳥羽院の第四皇子であり崇徳院の弟宮である雅仁親王の男御子までも、その養いの御子とする。(中略)皇位継承の可能性を持つ御子達をすべて「我が子」となしえて、皇后得子の力はなによりも強大になった。 (P152)

父を欠いた哀れな下級貴族の娘だったはずが、あれよあれよという間に御世第一の力を手に入れてしまった。

皇后得子は、近衛帝のご元服を境に、美福門院の院号を得る。保元の乱とは、この美福門院と藤原頼長の戦いなのである。 (P153)

というところで長くなったので、頼長の話は次回へ。

2012年2月 1日 (水)

『双調平家物語』第6巻/橋本治~白河院の作られ方~

大河ドラマをきっかけに『双調平家物語』を読み返そうプロジェクト進行中。

第6巻は主に「白河院はなんであんな暴君になってしまったのか」というお話。

白河院の父親は後三条天皇。後三条天皇はその前の後冷泉天皇の異腹の弟。後冷泉天皇の母親はかの藤原道長の四女。つまり後冷泉天皇は道長の孫だったのだけれども、後三条天皇の母は藤原の娘ではなく内親王だった。この内親王も実は道長の孫だったりするんだけども、「摂関家」というのが「娘の腹に皇子を得て、その皇子を帝位につけ外戚として威をふるう」ものである以上、「内親王腹の皇子」というのは「うまみ」がない。

だもんで、即位以前の後三条天皇はもちろん、その息子である後の白河院は大変不遇だった。道長の息子である頼通教通兄弟は後冷泉天皇に競って娘を贈り、その娘が皇子を産み、次の天皇になることを熱望していた。後三条天皇は「東宮」だったけれども、摂関家にとっては「邪魔な存在」でしかなく、ために東宮の御子たる白河院は父が即位するまで「親王宣下」も受けられていなかった。

頼通教通の娘達は皇子を生まないまま、後冷泉天皇は崩御。

帝位についた後三条天皇や白河院が「それまで自分たちを冷遇してきた」摂関家を恨むのは当たり前、その「専横」を排そうとするのは当たり前の話。

乱世へと向かうその先の世に最も肝要となるものは、舅たる男の力を排し、ただ人を従えるばかりの「父」となることだった。それを抑える「舅」としての力を奪われて、その後の摂関家は、哀れにも凋落への道を辿るのである。 (P51)

東宮時代の後三条天皇に、摂関家嫡流の男達は娘を奉ろうとしなかった。白河院の母は同じ藤原でも傍流の男の養女である。御世の帝の後宮に娘を贈ることばかり考えて、「その先」へ手を打つことを忘れたあげく、摂関家は「舅」としての地位を失う。

頼通教通にも気の毒なところはあって、父道長が先手先手で四人の娘を次々と帝の后にしたために、頼通教通の娘の出番が来なかったのだ。しかも皇太后やら中宮やらになった頼通教通の実の姉妹達は「私がいるのになんであんたの娘なんか後宮に上げるのよ」とか、「私の娘(内親王)の立場はどうなるの」とか言って、頼通教通の行く手を阻む。

そうして後手に回ってるうちに、頼通教通は「舅」になり損なう。

何しろ道長の長女は66代一条帝の后、次女は67代三条帝の后、三女が68代後一条帝の后で、四女は69代後朱雀天皇の后。次の東宮、その次の東宮、と全部自分のものにしちゃっていたのだ、道長。

偉大で先が読めすぎたために、かえって息子達の「先」を潰してしまった道長。「欠けたることのなき望月」が欠ける芽は、実は自分が蒔いていたのね……。

で。

「親王宣下」を受けると同時に「東宮」にもなった白河院。

でもやっぱり彼は不遇のまま、彼に娘を贈る権力者もない中、父帝は若い女に手をつけ皇子を二人ももうけ、「おまえの次の天皇はこの二人の兄の方、そしてその東宮には弟の方を」と白河院に言い含める。

「必ず弟二人を天皇に、必ず」と言って父帝は亡くなってしまい、「わかりました」と言ったものの、よく考えるとその「遺言」は、「おまえはただの繋ぎだからな」と言っている。後三条天皇が亡くなった時、まだ弟達は2歳と0歳とか、そんなもんなのである。そして白河院は20歳くらいの青年。

これからいくらでも白河院にも皇子ができるはず。でも「東宮はおまえの子じゃなくて俺の子。その次もやっぱり俺の子」。

え? それって、おまえはさっさと譲位して弟に御位を譲れってこと? おまえは子を作るな、自分の子を東宮にしようなどと思うなってこと?

……死の間際、単に後三条天皇は生まれたばかりの幼い子ども達の行く末が心配だったのであろうけれども、不遇の時を経てやっと帝位についたと思ったら実の父に「おまえはさっさと譲位しろ」に等しいことを言われてしまったわけで。

白河院が狂っていくのもむべなるかな。

でももしかして最愛の女、賢子が早世しなかったら、白河院の暴虐もあそこまでにはならなかったのかもしれない。

賢子は藤原頼通の息子師実の養女。摂関家嫡流の女がやっと白河院のそばに上がる。一度失われた摂関家の勢威はもう戻らないけれど、自身にふさわしい若さと美しさを兼ね備えた賢子を、白河院は深く愛す。

愛して、そして自身も「父」になって、愛する女の生んだ皇子を後継ぎに、と思う。父、後三条帝の遺詔に反して。

人を愛するのは、人の常である。人を愛して、人は、愛せぬ者が生まれることに気づかない。ただ「愛しい」と思う者のかたわらには、「さほど愛しいとも思われぬ者」が必ず生まれる。光がさせば影が生まれる。さす光が強くなればなるほど、そのかたわらの影は強く濃くなる。愛されぬ者の影を濃くして、人の愛なる執着はいやまさる。仁慈の敵は、愛なのである。 (P95)

「仁慈の敵は、愛なのである」という一文に唸ってしまうのだけど、みんなに思いやり深くあろうとすれば、個別の深い愛は捨てなければならないのだよね。つまりは「私心」というものを。

その第一は、天子が「私(わたくし)」をお持ちになられたゆえである。 (P124)

何の「第一」かっていうと、「御世の変貌」=乱れ、なのだけれど。

白河院が「私心」「私欲」を持った時、それを諫められる者がもう御世にはいなかった。

でも、それが世の乱れのもとなら、天子は従来通り摂関家に抑えつけられていた方が良かったのか? 「舅」たる者に「私」を取り上げられて、ただ次の帝を生むだけの存在でいれば?

私欲なくただ国のこと民のことを思う、もちろんそれが理想だけれども、そんなことが神ならぬ人の身に可能なのだろうか。

天子であろうとも、誤った時には諫める者が要る。摂関家の力が弱まり、そのような者がいなくなった。しかしそれ以前、摂関家は「私欲」のためにしか天子を諫めなかったのではないのか? どちらに傾いても、「専横」は生まれる。ただその座にある者の「徳」を期待するしかないのか――。

そもそも摂関家は、「お主上にご意志はない」ということを前提とする勢力なのである。 (P134)

御世の帝のなさるべきこととは、摂関家の娘を寵され、その腹に皇子を宿され、その皇子に御位を譲られることである――摂関家の長達は、長い間このことを信じ、この理(ことわり)に従って御世を動かして来た。皇子を得られ、三十(みそ)を過ぎられた帝が御位にあられるなどとは、そのこと自体が異例なのである。 (P150)

そんなことわりが正しいわけもない。その歪みを正そうとして、けれどその専横しか「手本」がなければ、「天子が力を得る」=「天子が摂関家のごとく朝廷をわたくしする」にしかならなくても仕方がないのではないのか。白河院の横暴は、勢威をなくした摂関家自らが利のために白河院に我欲を吹き込んだせいでもあるのだから。

悪いのは、一体誰だろう?

愛する中宮賢子を亡くして、白河院は嘆き悲しむ。中宮の忘れ形見の内親王に妻の面影を見て、実の娘ゆえに交わることができず、手当たり次第に女に手を付ける。けれど愛する中宮以外の女が生む「子」には何の関心も持てず、お手つきの女ともども臣下にくだされる。平忠盛もまた、そのようにしてご落胤を押しつけられた「臣下」だった。

もしも賢子が健在で、その後も白河院の皇子を生み、そばで見守っていたなら、少なくとも「清盛」は生まれなかったのかもしれない。忠盛に預けられることもなく、歴史は変わっていたのか……。

源義家憎しの心で用いた源惟清。その妻が若く美しいと聞いて白河院は早速寝取る。それが大河ドラマで松田聖子が演じている祇園女御。院の御所に昇殿を許された喜びもつかの間、惟清は弟達ともども流罪になる。その妻を手元に置こうとする白河院の気ままによって。……ほんまになぁ、白河院。

『双調平家物語』では祇園女御の異腹の妹(親を亡くして女御のもとに引き取られていたらしい)を清盛の実母としている。

そして子のない祇園女御の養女となったのが壇れいちゃん演じる藤原璋子、後の待賢門院。

幼い頃から白河院と一つ寝をして育った璋子。小学生の年齢で白河院の「愛妾」だった彼女は14歳で二人の男と密通し、17歳で鳥羽帝の後宮に上がる。御世第一の権力者に愛されて育った気ままな「女王様」の彼女はしかし、ほとんど常に白河院のもとにいた。鳥羽帝のそばにいるのは月の触りの時ばかり。それで彼女が妊娠したなら、その御種が誰のものであるかは一目瞭然。もちろん鳥羽帝も最初から知っていた。

璋子が崇徳帝を生んだのは19歳、白河院はその時67歳。鳥羽帝は17歳だった。

「鳥羽院失せさせ給いて後、日本国の乱逆ということは起こりて後は武者の世」と、天台の大僧正慈円の言うその始まりは、お手つけられた養女を、白河の上皇が鳥羽の帝の後宮へ上げられたこと。子を生まぬ三河守の妻を奪われ、夫たる源惟清の一族を流されたこと。源義家の衆望を悪(にく)まれ、同じ清和源氏の惟清を、院の御所へとお召しになられたこと――これこそが、後の世の綻びの種である。 (P235)

自分の愛妾を帝の後宮に送ってしかも自分の子を産ませる、なんてことはさすがの摂関家もしなかった。自らが「天皇」であったがゆえにできた狼藉だよなぁ。

本当に気の毒な鳥羽帝。白河院の睨みが効いてるから、他の女を後宮に上げることもできやしない。17歳で祖父の子(つまり叔父)を「自分の子」とさせられるなんて。

それはまた「当の生まれた子」である崇徳帝にも暗い影となってのしかかっていくわけで。

嗚呼、白河院。

鳥羽帝は21歳の若さで位を下ろされる。自身の子ではない崇徳帝にその座を譲るために。もちろんそれは「自身の子を御位に」と思う白河院の意志。崇徳帝はその時わずか5歳。(ちなみに鳥羽帝は5歳で御位についてる。鳥羽帝の父堀河帝は8歳で即位)

崇徳帝11歳の時、白河院は77歳で崩御。鳥羽院は28歳。ついに「目の上のたんこぶ」がなくなった鳥羽院。逆襲が始まって当然だよなー

白河院の不興を買って宇治に隠居していた前の関白藤原忠実を呼び寄せる鳥羽院。一方、忠実の嫡男忠通は自身の娘を崇徳帝の中宮にしていて、「次の帝の外戚となる」という摂関家の本分を取り戻そうと布石を打っている。

崇徳帝(朝廷)につく忠通と、鳥羽院(院の御所)につく忠実。二組の親子による「乱」はもうすぐそこ……。(って書いたけど、7巻読み進めたら「乱」の様相はそういうものではないような。あれれ)

 

ということで、6巻は終わるのですが、忠実の嫡子忠通を産んだのは、白河院最愛の中宮だった賢子の異母妹・師子なのですね。賢子の妹ならさぞかし…ということで彼女も白河院の毒牙にかかり、その御子を産んでいたのだけれど、御子ともどもうち捨てられていた。

その師子を、忠実は妻にする。白河院の御子を引き取ったわけではなさそうだけれど、白河院のお手つきの女を自分のものにした、という意味では忠実も忠盛と同じだったのですね。

しかし、驕ったのは平氏ばかりではない。藤氏とてまた驕った。驕る以外になすべきようのない権勢の座に着いて、平氏の一族はその先例に従い、なすべきことをした。武者の世を招いた者は、その権勢の座にあって、権勢を守る以外のことをなしえなかった者達である。 (P290)

藤の一族に、平氏の驕りを責めるほどの資格はない。他氏の栄華を羨むばかりの都の男達に、武者の世の到来を嘆く資格はない。 (P292)

摂関家の専横、白河院の横暴、貴族達の無為無策……こんな魑魅魍魎が跋扈する世界で、平清盛がどれほどの「逆臣」であったのか。ねぇ。

国語科的心理テスト

昨日、中学生の息子ちゃんが「国語の時間に面白いことした」と言ってプリントを見せてくれました。

その名も「国語科的心理テスト」

なかなか楽しめるのでご紹介します。


【その1:接続詞の気持ち】

次の接続詞に続けて文章を完成させてください。それぞれ、独立した文章にしてください。

①しかし、
②やがて、
③ただ、
④だって、
⑤そして、

【その2:雨あがりの舗道】

次の言葉のあとに言葉を埋めてください。

①水たまりは、
②あの子って、
③今日の私は、
④すこしは、


はい、皆さんも文章作れましたか? ぜひ作ってみてくださいね。


ちなみに息子ちゃんの作った文章。

【その1】

①しかし、成功を収めるのは容易ではない。

②やがて、日が暮れ、あの日は終わりを告げた。

③ただ、後には街の雑音が残るのみ。

④だって、時間がなかったんだ! それは言い訳にすぎない。

⑤そして、また、次の朝が始まる。

【その2】

①水たまりは、人の心を写すように、ただ澄み切っている。

②あの子って、バカじゃないの? そう言われている気がした。

③今日の私は、いつもより時間がある。

④すこしは、勉強もしよう。そう思った。

さすが、伊達に本は読んでいません(笑)。「それ、詩じゃねぇか!」とお友達に突っ込まれたそうです。いや、でも、「続き書け」って言われたらこうなっちゃうよね。


というわけで、私が作ったのはというと。

【その1】

①しかし、戦いはまだ終わらない。

②やがて、夜は明けるだろう。

③ただ、この世に生きた証を残したいだけだ。

④だって、女の子だもん。

⑤そして、戦いは続く。

【その2】

①水たまりは、青い空を映している。

②あの子って、オタクだよね。

③今日の私は、一段と美しい。

④すこしは、世の中のためになりたいものだ。

と、こんな感じ。息子ちゃんの回答を先に読んでいたせいもあるし、「どういう意味付けの質問か」を予想できるものもあったので、ちょっと構えて書いちゃった部分もあります。「文章を書け」と言われるとつい格好良く書こうと思ってしまうのはもう習い性です(笑)。


【解説】

けっこう詳しい解説プリントを持って帰ってきたのですが、めんどくさいのでそれぞれの設問が何を表すか、要点だけ。

【その1】

①しかし=今までの人生は

②やがて=恋人との行方は

③ただ=一人の時は

④だって=あなたの嫌なところは

⑤そして=あなたの老後は

ということだそうです。

つまり私の今までの人生は戦い、老後も戦い、戦士乙!なわけですね(笑)。

息子ちゃんの「恋人との行方」は「終わりを告げた」ですし(爆)。

総じて息子ちゃんの【その1】は老練というか、淡々と大人ですね。私の方が「喧嘩上等!」、「だって」と「ただ」も自分でうなずけるところがありすぎて笑えます。まぁ今は女で良かったな、と思ってるんですけど。

【その2】

①水たまりは=私の本当の姿は

②あの子って=好きな人の前では

③今日の私は=ウソをついている時の私は

④すこしは=今年の目標は

となっています。

はい、息子ちゃんの今年の目標、「勉強する」ですね(笑)。本人、めっちゃ後悔してました(爆)。

しかし二人とも水たまりが澄んでて何より。私、とっさに「アメンボ」連想したんだけど、書かなくてよかった(笑)。

ウソをついている時の私は一段と美しいんですって。おほほほほ。

皆さんの結果はいかがでしたか!?

注)息子ちゃんには回答掲載の許可をちゃんともらっています。そもそもこういうプリントを楽しそうに見せてくれること自体、中学生男子には稀なのではないかと思うんですが、母のネット依存にも理解があってありがたいです、はい。

2012年1月24日 (火)

『エリュシオン』第4巻/市東亮子

(1巻の感想はこちら、2巻の感想はこちら、そして3巻の感想はこちら

12月の下旬に出た4巻、やっと読みました♪

いやぁ、面白かった! そしていいとこで終わった!! 早く続き続き!!!(笑)

えーっと、トロイア戦争を背景に、女だけの国アマゾーン国の命運を描くこの物語。アマゾーン国に逃げてきた予知能力を持つ娘アルティモラ。異民族のアルティモラにも優しい、次期女王候補のペンテシレイア。

女王になるための修行で外国へ行っていたペンテシレイアの帰国が近づく中、アマゾーン国では「子作りの儀」が。

女だけの国、アマゾーン国。放っておいたら子どもはできない。だから一年に一度、「犠婦」と呼ばれる女達が他国へ行って男達と交わるのです。

今回鉄器で有名なヒッタイトへ出かけた犠婦達には、とある密命が……。

武勇に優れたアマゾーンの美女達が弓や剣を取って男達を蹴散らす場面はなかなか痛快。そしてこのヒッタイトでの戦いを機に、アルティモラが予知した「12人の戦士」のうちの2人、ポレムーサとハルモトエーの人生が変わる。

ポレムーサは出産を経験した女。純潔を重んじるアマゾーン国では、「犠婦」となった女は格が低く、参政権を奪われる。貴族であったものも一般市民となり、未来永劫役職にもつけない。たとえどんなに能力があっても。

国の存続のために、ある意味もっとも重要な仕事をしていると言ってもいいのに。

また、異民族のハルモトエーにも市民権はない。

アマゾーン国の未来のため、そのような硬直した制度を変えていこうとする現女王。反発する勢力は自分たちに都合のいい次期女王を選ぶため、神託を受ける巫女頭に干渉しようとする。

そして次の女王が選ばれる日、降りた神託は――。

ってとこで4巻終わっちゃうんだなぁ。ああ、もう、早く続き続き!(爆)

新しく「12人の戦士」であることが発覚したのは新たに一人。これで(確か)7人。

そしてアルティモラははっきりと「この先の悲劇」を予知してしまう。なんとかそうならないように未来を変えようとするアルティモラ。だけど…。

前にも書いたけど、果たして未来は変えられるのか、どんなことをしても、むしろその「あれこれやったこと」が「予知されたこと」を招いてしまうのではないか。「予知された未来」が「予知された」ことによって容易に変えられるのなら、それは本当に「予知した」と言えるのか。

一方で、変えられないなら「予知」など無意味ではないのか。

「ただ知るだけで何もできないのなら、なぜこんな能力を与えられるのか」とアルティモラも苦悩する。けれど神の答えは。

「神に“何故”を問うか…!?」

なんと理不尽なこの世界。

 

この先まだまだ長いと思われるけど、アルティモラの予知能力に何か少しでも希望がありますように。そのような力を持って生まれてきてしまったこと、アマゾーン国での出逢いを、哀しまずにすみますように――。

2012年1月23日 (月)

『特捜班ビクトール』『赤い数珠』/モーリス・ルブラン

ルパン全集22巻目『特捜班ビクトール』。

「特捜班のビクトールがついにルパンを逮捕した しかし―― アルセーヌ=ルパンを名乗ってしとめられた男の正体は? そしてビクトール刑事とははたして何者なのか? 謎につつまれた国防債権の盗難事件を発端としてくりひろげられる波瀾万丈の推理劇」

って、カバー見返し部(だと思う。図書館の本なので文章部分だけが切り取られて貼られてるんだけど)に書いてある。これ、すんごいネタバレだよね。こんなふうに書いてあったら「つまりビクトールがルパンなわけね」ってバレバレやん(笑)。

しかも「ついにルパンを逮捕した」って、逮捕するの本当に最後なんだよ。本文300ページ中280ページとかその辺。

それが表紙開けたらいきなり「ルパンを逮捕」ってあんた。

まぁもちろんそれがわかっていても楽しめるのがルパン。楽しませてくれるのがルブラン。

ビクトールは、「一筋縄ではいかぬつむじまがりの老刑事で、〈気の向いた〉ときだけ、それも道楽はんぶんで仕事をするというので、そのふうがわりな仕事ぶりや天邪鬼な態度が、なんども新聞紙上で指摘されたものだ」と紹介されて登場する。

そしてふらりと入った映画館で鹿の子色の髪の美人に目を奪われる。

もうこの、「すぐ美人に惹かれて後をつけようとする」ところで「実はルパン」を白状してるようなもんですが(笑)。

とある男が「泥棒!その女をつかまえてくれ!」と叫んだことで、ビクトールは美人の尾行を諦め、泥棒とそれを追いかける男の方に注意を振り向ける。それがビクトールが「国防債盗難事件」に関わるきっかけで――。

この盗難事件自体、二転三転、しかもアリバイ崩しがおフランスというかちょっと赤面な感じで面白いのだけど、そこに見え隠れする例の「鹿の子色の髪の美人」。実は彼女はアルセーヌ=ルパンの愛人らしいということで、ビクトールは変装して彼女に近づいていく。

「絶対ルパンを捕まえてやるぞ!」というビクトール。いやいやいや、ルパンはあんただよね?と思いながらもその絶妙な描写に「やっぱり違うの?」と思わされたり。

変装のうまさも、その態度と言葉で一瞬にして人を支配下に置くその“カリスマ性”も、「あなたこそルパン!」なんだけども。

最後の最後、ついに真相が明らかになるところでは「やっと来たーっ!」というカタルシスが。

「ルパンの愛人」と噂されていた美人さんは見事「本物のルパン」といい感じになるし、最終ページのオチがまたね。おフランスですわ~。

しかし「特捜班」ってなってるけど、ビクトールはどう見ても一人なんだよね。チームでは動いてない。刑事らしからぬビクトールのやり方に協力してくれるラルモナ刑事はいるけど、「班」というイメージではない。

「右京さん一人でも特命係」みたいなもんなのかしら(笑)。

当時のパリの警察機構はたびたび変わったみたいだし、外国の部署・役職名を日本語に置き換えるのはなかなか難しいのでしょうね。

『ジェリコ公爵』に続いてルパンが登場しないルパン全集『赤い数珠』。

お話自体は面白かったけど、やっぱり「ルパン全集」だけにルパンの登場を期待してしまう。「もしかしてこの好色なおっさんがルパン!?」とか思いながら読んでしまったぢゃないか…。途中から「あー、これはもしかして出てこないパターンか」って諦めて純粋に謎解きを楽しみましたが。

この「ルパン全集」にはルパンが出てこない「別巻」が5巻あるから、『ジェリコ公爵』と『赤い数珠』も別巻扱いにすればいいのに。

他社でも「ルパンシリーズ」ということで出版されているようで、日本に紹介された時からこの2作は「ルパン物に含める」という伝統になっているのかもしれない。うーん。それってどうなの。

さて。

狩猟解禁に合わせドルサック伯爵の屋敷に集まった招待客たち。そのうちの一人、美しい人妻クリスチアーヌに伯爵は夢中。もちろん伯爵は既婚者で、客のもてなしは妻であるリュシアンヌが仕切っている。

その夜、川をライトアップするという余興を見物に行った客達が戻ってみると、伯爵の金庫から株券が盗み出され、一人館に残っていたリュシアンヌが殺されていた。手にした数珠は赤い血にまみれて――。

というわけでタイトルが『赤い数珠』。

翌朝駆けつけた予審判事ルースラン氏の捜査方法というのがなかなか変わっていて、彼は自分では捜査はしない。もちろん足跡があったかなかったか、など必要な情報は部下に集めさせるし、まったく推理しないわけではないんだけど、彼は「当事者達に真相を暴かせる」。

しかも痴情事件が好きで、「のんびり釣りができなくなるから昇進なんてごめんこうむる。わしの考える理想的な事件は“握りつぶせる事件”だ」な~んて言っちゃう。

「痴情事件では、尋問は最少限ですむ。ほんのわずか質問するだけで、憎しみ、怒り、復讐など、ありとあらゆる本能や感情のからくりがひとりでに動き出す。あとは耳を貸すだけでいいんだ。(中略)自分で自分の尋問役を買って出て、当人には意外であっても、ひとりでに不明な点があきらかになり、たがいに相手をかばいあい、自分を守るすべも知らん役者なのさ」 (P107)

なるほどねー。

そして今回の事件にも色恋沙汰が絡んでいる。そう、美しい人妻クリスチアーヌに熱を上げている館の当主ドルサック伯爵。彼にはもちろんクリスチアーヌの夫が邪魔だし、自分の妻リュシアンヌだって……。

「まぁ、考えてもみたまえ、この目の前の人たちは、われわれにとって、まったくの赤の他人だ。とつぜん、われわれの前にあらわれでたというのに、こっちは無実かどうか見きわめなくちゃならん。行為の動機を見つけださにゃならんのだ。おまけに、われわれには、この人たちの心理状態も、趣味も、習慣も、過去も、遺伝的な性格も、なにもかもわかりゃしないときた」 (P120)

一目で相手の職業や家族構成などなどを見抜いてしまうホームズならいざ知らず、普通の人間には確かに当事者達の人間関係を把握するだけでも大変だよね。

「さよう、ふつうはべつべつに尋問して、そのあいだのくいちがいを見つけようとする……ところが、わしときたら、たがいに直接ぶつかりあってくれるのが好きなんだよ。みんな考える時間がないだけに、かえって、真相の光を容易にほとばしりだすものさ」 (P121)

もちろんルースラン氏の質問は的確で、うまくみんなを誘導していくわけだけども、結果的に真相を暴くのはクリスチアーヌで、そこに至るまでの当事者たちの嘘、その翻し、秘密の開示、なんとも見事に「勝手に事件が解決していく」。

この作品はルブラン70歳の時のものだそうですが……いやぁ、ルブランさんホントすごいなぁ。手に汗握る冒険物だけでなく、こんな一風変わったミステリまで。

もっとも、美女が鍵なのはルパン物と共通。これはルブランさんの好みというより「フランスだから」なのかしら???

ドルサックがクリスチアーヌにつきまとって、あげくソファに押し倒すシーンなんかもう超セクハラっちゅうかエロ親父のストーカーで、読んでてうぇぇってなっちゃったよ。

あまりのことに困惑してクリスチアーヌが瞬間抵抗をやめてしまったのを見て「ほら、やっぱりおまえにもその気があるんじゃないか!」とかホントに、男ってなんでそう自分に都合良く考えるかな。

しかもルースランまで最後、「あの女はあの男を愛していた」なんて言うんだよ。いくら憎しみと愛が表裏一体の感情だとしたって、それはないんじゃないのぉ。

そこ以外は面白く読めました。章立てが「プロローグ」「夜」「朝」「午後」「エピローグ」と実にシンプルなのもいい。

 

いよいよルパン全集もあと2冊! ちゃんとルパン出てくるよね?(笑)

2012年1月20日 (金)

『平清盛』を機に『双調平家物語』を読み返そう

大河ドラマ『平清盛』が始まりましたね。

ほんと言うと始まる前に読み返そうと思ってたんですが、ルパン全集にかまけていて全然読めてません。

2007年10月に最終刊が出て、2008年2月に読み終わったあと、「もう一度最初から読みたい」と思って読み始めたものの、3巻ぐらいまで行ったところで他の本に浮気してそのまま中断。

今度こそ最後まで読み通すぞ!!!

大河見てあの時代に興味を持った方にもぜひ読んでいただきたいなー、と思うのですが、中央公論新社は便乗フェアとかやらないのかしら。全15巻、しかも1巻が中国の話ということでまぁなかなか推しづらいのかもしれない(^^;)

そう、『平家物語』なんだけど、中国の話から始まっちゃうし、やっと日本の話だと思ったら大化の改新で、清盛はなかなか出て来ない。

「諸行無常の鐘の声」の普通の『平家物語』で、清盛は中国の逆賊・佞臣と並べられている。「でも清盛ってホントにそんなに悪い奴だったの?そもそも日本の“体制側”、清盛が逆らったとされる“国家側”ってどんなものだったの?」というわけで、まず「中国の悪い奴はこんな感じ」という話が来て、「日本の国家はこんな感じ」で大化の改新から延々説き起こされるのです。

その辺のことは別blogの方で記事にしています。

『双調平家物語』/橋本治

最終15巻まで読み終わった時の記事↓

『双調平家物語』完結!

『双調平家物語』最終巻/橋本治

そしてもう一つ関連記事として

『双調平家物語』が毎日出版文化賞を受賞!

こんだけ書いてまだ足りないのか、って感じですが(^^;)

こんだけ書いてるのに何巻から清盛が出てくるのかもわからないし(笑)。

というわけでちゃんと読み返す前に各巻の内容をざっとおさらいしてみようかと。

【1巻・序の巻、栄華の巻Ⅰ】

 序の巻:中国の話です。玄宗皇帝、楊貴妃、安禄山。「は?平家物語でしょ?」と意表をつかれるけどこれがまた大変面白い。

 栄花の巻:藤原氏の祖は鎌足公、鎌足公と言えば大化の改新、大化の改新といえば蘇我入鹿が討たれる、というわけでその父の蘇我蝦夷の話から。

【2巻・栄花の巻Ⅰ】

 蝦夷の父の馬子まで遡り、蘇我氏が物部氏に勝って権勢を握る話が語られ、舒明天皇亡き後なぜ蝦夷はその后・皇極天皇を立てたのか、そして蝦夷の息子入鹿が父に反発、勝手な行動をして墓穴を掘る。
 あげく中大兄皇子と鎌足に討たれ、大化の改新
 しかし中大兄皇子はすぐには即位しない。
 蘇我入鹿誅戮から二十数年、やっと中大兄皇子は天智天皇になるのだった。

【3巻・栄花の巻Ⅱ】

 天智天皇の弟である大海人皇子と天智天皇の子ども大友皇子が争って世に言う壬申の乱
 勝ったのは大海人皇子、即位して天武天皇となる。
 そして天武天皇崩御の折り、まだ世継ぎである草壁皇子が幼かったので天武天皇の后で天智天皇の皇女である持統天皇が即位。
 天武天皇の「皇子」は大津皇子とか高市皇子とか他にもいっぱいいたのでわざわざ女帝が立つ必要はなかったのだけど、自分の息子が可愛い持統天皇は「草壁が位を継ぐのよ!決まってるじゃない!!!」と他を蹴落としてしまうのだな。
 そして愛する息子のために「律令国家」を整えるのだ。
 持統天皇は大変「できる」人ではあったのだけど、子どもかわいさのあまり「国の形」を歪めてしまう。
 草壁皇子は早世し、その皇子である文武を位に就けて、持統天皇は「上皇」として国を治める。
 「実権を持たぬ年若い天皇」を外祖父藤原氏が補佐するという後の「摂関政治」、そして「上皇」が朝廷とは別に力を持ってしまう「院政」の芽は、早や持統天皇の御代に生まれていたのだ。

【4巻・栄花の巻Ⅲ】

 持統天皇が苦労して即位させた孫、文武天皇も早世。文武天皇の皇子(後の聖武天皇)までの「つなぎ」として文武天皇の母(天智天皇の皇女であり持統天皇の異腹の妹)が元明天皇として即位。その後、文武天皇の姉の元正天皇を経て、やっと聖武天皇が御位に就く。
 女帝を認めるか云々で平成の世は悩んでいるわけですが、平安の世には皇位を継げる男皇子は他にいっぱいいた。いっぱいいたけど、持統天皇が「私の子どもでなくっちゃ!私の孫でなくっちゃ!」と自分の血にこだわって、ややこしいことにしてしまった。
 ただ持統天皇自身もそうだけど、この時代の「天皇の后」というのは一般人じゃなくて彼女自身も「皇女」で「天皇の血筋」だからまぁ、「万世一系的な「正統性」はあるわけです。
 持統天皇は大化の改新を成し遂げた天智天皇の娘ではあるし、その弟だった天武の血筋よりも「私を通じたお父様の血筋の方が上!」と持統天皇が思ったのも仕方ないかもしれない(思ったかどうか知らんが)。

 で。
 聖武天皇の后は藤原の娘である。
 皇女じゃない臣下の娘が初めて「后」になって、「天皇の外祖父藤原氏が摂政として実権を握る」の前提ができる。まだ前提だけで、聖武天皇の御代に藤原の力はそこまで大きくはならない。
 藤原の娘である光明皇后が生んだ内親王が「皇太子」になったのは、藤原の専横というよりも、光明皇后の心細さに依ったらしい。「皇太子の母」であるゆえに臣下の娘でも「皇后」になれた。だがその皇太子が早世し、後ろ盾となる藤原の兄たちも亡くなり、安心して「皇后」という地位にあるためには再び「皇太子の母」にならねばと。
 その時は光明皇后の腹ではない親王もいた。しかし他の候補は一人また一人と消えていき、結局そのまま内親王が御位に就くことになる。孝謙天皇である。

【5巻・父子の巻、保元の巻】

父子の巻:
 孝謙天皇がいったん譲位して大炊王が即位。藤原仲麻呂が孝謙帝の寵臣として権力を握り、ちょうどその頃中国では安禄山の乱が。1巻で述べられた「中国での逆賊」、それに刺激を受けたのかどうか、仲麻呂は背いた。御代の帝ではなく、すでに上皇となっていた孝謙帝に。
 仲麻呂は敗れ、帝は廃され、孝謙天皇が重祚。
 道鏡との醜聞を経て、史上唯一女の身で「皇太子」となった帝は51歳で世を去る。
 皇太子が定められていなかったため、貴族達の会議によって選ばれたのは天智天皇の皇子芝基親王の血筋の白壁王(光仁天皇)。
 白壁王の后は孝謙帝とは異腹の姉妹(つまり聖武天皇の皇女)。この井上皇后が謀反の罪で逐われ、その後都には次々と「祟り」が起こる。
 井上皇后腹ではない光仁天皇の皇子山部親王が桓武天皇となって、祟りの続出する奈良の都は廃され、長岡京へと遷都。しかしそこでもまた「祟り」は続き、山城の平安京へと再度都が遷された。
 平安の都で藤原北家は隆盛する。桓武天皇の孫にあたる仁明天皇の后順子が国母となって後、15代もの天皇が藤原北家の娘の腹から生まれる。
 桓武帝は第50代の天皇。我が世の春を謳歌した藤原道長が長女を贈った一条天皇は第66代。四女が嫁いだのが69代の後朱雀天皇で、そこから生まれたのが70代の後冷泉帝。

保元の巻:
 71代後三条天皇は、後朱雀天皇の皇子。しかしその母は藤原氏の女ではなく、三条天皇の皇女。この皇女の母親は道長の次女だから後三条天皇の祖母は藤原の娘なんだけれども、母は内親王。
 それゆえ摂関家の専横を彼は肌で感じていた。内親王腹の東宮であった彼は不遇だったのだから。
 そしてその後三条天皇の皇子貞仁親王こそ後の白河院(大河では伊東四朗さん♪)である。

【6巻・保元の巻】

 白河帝に譲位した後三条帝は、白河帝にとっては異腹の弟である親王を東宮に、そしてその次にはまたその弟宮を、と言い残して亡くなる。
 しかし白河帝は自分の愛する女から生まれた皇子を帝位につける。わずか8歳の幼帝堀河帝。それ以前なら外祖父たる藤原家の男が摂政関白として補佐、実権を握るところ、関白藤原師長は何の力も持てない。権力は天皇の父であり上皇となった白河のもとに。
 摂関家藤原氏は没落への一歩を踏み出し、白河院の御所に武者たる源惟清が昇殿を許される。大河では松田聖子さんが演じている祇園女御はもともとこの惟清の妻だった。『双調平家物語』ではこの祇園女御の妹が清盛の生母とされている。
 そして語られる清和源氏の嫡流、源頼朝の祖源義家の不運。
 白河院の登場によって権力を殺がれた藤原氏、道長の孫である師実、さらにその孫である忠実(大河では國村隼さん)が登場する。

……はぁぁぁ。内容が濃すぎて「ぱらぱら」っとめくっただけなのに疲れた……。

確か孝謙帝のところまで読み返したし、ちょうど白河院出てくるから5巻の「保元の巻」から続きを読み返すことにいたします。

またそのうちしつこく感想書くかも(^^;)

2012年1月12日 (木)

『白痴』/坂口安吾

アニメ『UN-GO』から始まったちょっとしたマイブーム、坂口安吾。とりあえず推理ものだけ読んでみようと思ってたんだけど、有名どころもちょっとかじってみようかと青空文庫で『白痴』をダウンロード。(Webで読みたい方はこちら

IS03の画面で99ページ。『安吾捕物帖』の長いエピソードよりも短いお話です。

まったく何の予備知識もなく読み始めたので、「え、こんなに戦争の話だったんだ!」とびっくり。

主人公は新聞記者を経て文化映画の演出家になった(まだ見習いらしい)伊沢という青年。27歳。舞台は戦時中の東京で、空襲で焼け出され、逃げていくところがクライマックス。

最初の人物相関図(というか近所の人の紹介みたいな)部分をめんどくさいなーと思いつつ読んでたらいきなりけっこう激しい戦争批判、お上におもねる会社の上司への怒りの吐露になって。

“事実時代というものは只それだけの浅薄愚劣なものでもあり、日本二千年の歴史を覆すこの戦争と敗北が果して人間の真実に何の関係があったであろうか。最も内省の稀薄な意志と衆愚の妄動だけによって一国の運命が動いている。部長だの社長の前で個性だの独創だのと言い出すと顔をそむけて馬鹿な奴だという言外の表示を見せて、兵隊さんよ有難う、ああ日の丸の感激、思わず目頭が熱くなり、OK、新聞記者とはそれだけで、事実、時代そのものがそれだけだ。”

伊沢は「芸術」を目指している。「芸術」が上司や世の中に認められないことに憤り、一方で諦め情熱を失い、200円の給料のために「こんな会社とっとと辞めてやる!」の一言が言えない自分に悶々としている。

…なんか身につまされるわ…。

そんな伊沢のところに近所の白痴の女が転がり込んできて、伊沢は彼女と同居を始める。彼女を泊めたことを、かくまっていることを知られまいと想いながら、そんなふうに「世間体」を気にする自分にまたしても悶々。

“怖れているのはただ世間の見栄だけだ。その世間とはアパートの淫売婦だの妾だの姙娠した挺身隊だの家鴨のような鼻にかかった声をだして喚いているオカミサン達の行列会議だけのことだ。そのほかに世間などはどこにもありはしないのに、そのくせこの分りきった事実を俺は全然信じていない。”

……うん、わかるよ……。

理知とか「精神」というものが感じられず、ただ「肉体」として、「生き物」として存在しているように見える彼女。

空襲の夜、伊沢は彼女の姿を他の住人に見られないよう、最後に路地を出る。

置き去りにすることもできるのに、伊沢は彼女を連れて逃げる。

それは愛情というのとはちょっと違う……でもやっぱり愛情かもしれない。途中で、普段はろくな反応を返さない彼女が「こくん」とうなずいたことに狂いそうなほど感動している。

たぶん、伊沢は女に勝手に「何か」を見て、勝手に感動しているんだけど、まぁいわゆる「恋愛」というものも勝手に勘違いして感動しているんだろうし、「何を考えているのかわからない、そもそも何も考えていないように見える」白痴の女じゃなくても、自分ではない他の人間が「何を考えているか」なんてわかるものじゃない。

「明日の希望がないから女を捨てるだけの張り合いもない」なんて伊沢は言うのだけど、それも言い訳ぽいよね。

この白痴の女を捨てて明日はもっといい女を、もっといい暮らしを、という「明日の希望」は確かにないんだろう。空襲で焼け出されて、どこもかしこも廃墟で、日本が戦争に勝つとも思えない、自分も生き延びられるのかわからない、今さら「世間体」を気にして何になるのか、という気分。

と同時に、きっと、女を捨てたら、いっそうなんだかよくわからなくなるんじゃないか。その、自分が生きてるってことが。

……まぁ、読んでる時はなんか「ほわぁ」という感動だけで、「嗚呼…」って慨嘆のため息が出るだけで。

短いお話だし、あまりごちゃごちゃ分析しても野暮だよね。

昭和21年6月発行の雑誌に載った『白痴』。終戦からまだ1年経ってない。当時の読者にとってはもっともっと生々しく感じられたんだろうな…。

2012年1月 9日 (月)

『バール・イ・ヴァ荘』『二つの微笑をもつ女』/モーリス・ルブラン

ルパン全集もいよいよ20巻目。まさかのみたびベシュ登場です!

『バーネット探偵社』でルパン扮するジム=バーネットにいいように遊ばれていたベシュ刑事、『謎の家』でも活躍(?)し、さらにこの『バール・イ・ヴァ荘』でも。

全集19巻の『ジェリコ公爵』は実はルパン作品ではないから、ベシュ刑事は3作連続で登場しているんですね。ルブランはよほどこのキャラクターが気に入っていたのでしょうか。

『謎の家』から2年も経っていない、という設定。

ジム=バーネットでもなくジャン=デンヌリでもなく、ラウール=ダブナックと名乗っているルパンのもとに謎の美女カトリーヌが訪ねてくる。と同時にベシュから電話がかかってきて、最初ルパンは「あんたのことなんか知らない」と言うのだけど、ベシュの方は「おまえがルパンだってことはわかってるんだ」と答えるのみならず、なぜかベシュはルパンのアパルトマンの鍵まで持っている!

そのベシュの鍵をこっそり盗んで、カトリーヌはルパン=ラウールの部屋を訪れたのですね。

『謎の家』事件の後ルパンとベシュは会っていなかったようなのに、変名や居場所を知っているのみならず鍵持ってるってどーゆーこと? ベシュ、ルパンのストーカー!?(笑)

「夜中にいきなり美人が部屋の中にいる」という演出のためにベシュが鍵を持たざるをえなかったのかな、と思いますが、ともあれ今回もどんどんサクサクと読み進んじゃいました♪

カトリーヌとその姉ベルトランドが祖父から相続したバール・イ・ヴァ荘。

敷地内の三本のヤナギがなぜか植え替えられていたり、かつて屋敷で働いていた婆さんに「殺されるよ」と警告されたり、怖くなってカトリーヌがルパンのもとを訪れたあと、ベルトランドの夫が殺され、たまたまその地に滞在していたベシュとともにルパンが謎解きにとりかかる。

祖父の遺した遺産をめぐる陰謀、そしてその「遺産」の正体は――。

もちろんルパンは美人のカトリーヌに惚れ、その姉のベルトランドにも惚れ、そしてもちろん美人姉妹二人の方もルパンに心を奪われてしまい。

実の姉妹と三角関係とかどーすんの、ルパン。どーもしないで二人とも好き♪三人で楽しく過ごそう♪などと思っていたルパンは事件解決後、あっさり二人に去られてしまいます。「あなたがどっちも選べないなら、私たちはあなたのもとを去るしかありません」。

二兎を追う者は一兎をも得ず。

日本には君にぴったりなことわざがあるよ、ルパン。

「でも、ほんとうに人を愛するというのは、そういうものではありません…(中略)わたしたちは、虚勢も嫉妬心もなしに、あなたの決断を待っていた。でも、いまでは、決断なんてないことを、わたしたちは知っています。あなたはいつまでも、わたしたちを同じように愛することでしょう。だから、わたしたちの決断をお伝えしにきたんです。あなたのほうが決断をくだすことができなかったんですから」 (P289)

女はそれを我慢できないんだよ。「二人とも同じくらい愛してる」なんていう、たぶん男にとっては変でもなんでもないことを。

「わたしを愛してくださるなら、ベルトランドより愛してくれなくてはいけないのに、そうではないんですから」 (P290)

「愛」っていうのは厄介なものだね。たった一人、自分だけをと望む。

まぁ男も最近はそれを我慢できなくて恋人のケータイから男性のメルアドを勝手に全部消すとかやっちゃうみたいだけど、でも相手にはそれを要求しながら自分は別に一途じゃないようなところが男にはありませんか…? どっちもどっちなのかな。

ともあれ二人に去られ、ベシュに八つ当たりするルパン。自業自得やーん(笑) 可哀想なベシュ。

でもこんなラスト、たまにはいいです。ルブランさんホントうまい。

ボートは音もなく川面をすべった。こまかく動くオールから、水滴が落ち、涼しげなささやきを奏でている。星空からぼんやりした光がそそがれていたが、地上の霧のあいだから、いつのまにか月がのぼって、すこしずつ明るさをましていた。 (P191)

トリックや冒険だけでなく、ルブランさんってこういう描写もうまくて素敵なのよね♪

ベシュのルパンに対する複雑な、反発しながらも惹かれているところとか。

「そして、きみが登場するわけか!」と、ベシュが、ラウールに話しかけるときにときどきみせる、絶対的といってよいほどの感嘆の口調でつぶやいた。 (P277)

ベシュとルパンのこんなやりとりも。

ベシュ「ほかになにが必要だったというんだ?」
ルパン「たいしたものじゃないけどね」
ベシュ「いったい、なんだ?」
ルパン「天才さ」
 (p285)

だから好きよ、ルパン♪

うーん、こちらはそれほど面白くなかったなぁ。

『ルパン』全集ずっと読んできて、初めて「読むのめんどくさい」と途中で思った(笑)。

それは図書館への返却期限が迫ってたこともあるし、最初に後ろの解説読んじゃってネタバレしてたこともあるし、またしてもルパンが女に惚れて仕事するだけだったこともある。

なぜその女が『二つの微笑をもつ』なのか、それも「え、これって実は二人いるってことなんじゃ?」と早い段階で推理できちゃったし。

ラウールことルパンのもとに突然現れた金髪の娘アントニーヌ。上の階の侯爵に用事があったのに、間違えて中二階のルパンの呼び鈴を押してしまった。愛くるしいその微笑に一発で惚れ込んじゃったルパン。

一方彼女を大泥棒グラン=ポールの愛人クララだと思って駅からつけてきたゴルジュレ刑事。もちろんルパンは彼女をゴルジュレの手から救ってあげる。

もともとルパンは侯爵の「失われた遺産」を調べるために中二階を借りていて、アントニーヌと侯爵の関係も気になるし夜中に侯爵の部屋へ忍び込む。そるとそこになんと当のアントニーヌも忍び込んできて――!

グラン=ポールの方も逃げた愛人クララを追っていて、そのグラン=ポールとクララをゴルジュレが追い、ルパンはクララ(アントニーヌ)にご執心。なので自然ルパンとゴルジュレも追いつ追われつ。侯爵の絡む15年前の「殺人事件」を背景に攻守入れ替わり立ち替わりの追跡劇。

最初にルパンの部屋に現れたアントニーヌの生き生きとした明るい微笑、クララの少し愁いを帯びた微笑。ゴルジュレもグラン=ポールも、そしてルパンもその二人を同一人物だと思ってるから、「二つの微笑をもつ謎めいた女」になってしまうんだけど。

別の女の子が二人いるんだよ、もちろん。

ルパンともあろう者が、そんな簡単なことに気がつかないなんて。

女の子の微笑に目がくらんでっからだよ!!!

ルパンはクララの方と長く過ごし、クララももちろんルパンに一目惚れしちゃってる。そして実はアントニーヌの方もルパンのことを……。どんだけモテるんですかねー、ほんま。

でもひどいんだよ、ルパン。最終的にルパンはクララと一緒にいるのに、「クララを愛するのはあなた(アントニーヌ)を愛しているからです」って。

それをわかっていたからこそクララはアントニーヌのふりをしたんだよね。同じ娘だと思わせようと。

最後までクララは「恋敵」アントニーヌのことを気にしているのに、ルパンは心の内で「アントニーヌ!アントニーヌ!」って。

いい加減この惚れっぽい浮気男には愛想が尽きました(笑)。

まぁいよいよあと4冊なんですけどね。愛想が尽きなくても終わっちゃうのだわ……。

解説でネタバレしちゃった殺人事件の真相、これはでもけっこう秀逸だよね。意外性というか、「そんなのあり?」というか。こういうネタも使っちゃうルブランさんはやっぱりさすが。

皆さんはぜひ解説を読まずにお楽しみください。

2012年1月 8日 (日)

『秘密』10巻/清水玲子

ああ、なんというかねぇ。キツいですねぇ、ホントに。

読むのがいっそうしんどくなってきました。

最初から薪さんに幸せな未来はないだろうと思ってはいたけど、最後のページのあれ、途中での青木の「ここで気づいてれば薪さんを止められたかもしれない、あんなことになる前に」の独白。

暗い。

暗すぎる(´Д`)

最初の頃の「せつなさ」がただ「キツさ」になってるんだもん。そしてちょっと読みにくいの。回想とか夢とかごちゃごちゃで。

長いし。

薪さんの脳に刻まれた「秘密」。薪さんだけでなく、それぞれの脳に刻まれたたくさんの「秘密」。

ごく個人的な秘密であってさえ、死後に勝手に覗かれるのはたとえ犯罪捜査のためでも嬉しくはない。

そしてそれが国家機密に関わることになれば、ただの「口封じ」ではなく、「脳」そのものを破壊しなければ隠蔽できなくなってしまった「MRI」のある世界。

薪さんは脳を撃ち抜いて自殺するんでなければもう、精神崩壊して赤ちゃんみたいになって青木と雪子さんに一生面倒見てもらうのが一番幸せな未来のような気がする……。

雪子さん、ずっと嫌いだったんだけど、今も決して好きではないけど、今回の「ずっとあの二人の中に入りたかった。一緒に戦いたかった」っていうくだりはじーんときた。

すごくわかる。

男同士の「相棒」の絆の中に、女はどうしたって入っていけないから。

……しかし薪さんの鈴木や青木に対する想いは恋愛なのかね。雪子さんのセリフだとそう読めるけど……。まぁ薪さんが女性に恋するっていうのもちょっと想像できないのは確かだけれども。

それにしても今回も青木は馬鹿でむかつく!!!!!

そりゃ姉夫婦を惨殺されて、それを第一発見者として見てしまって、おそらくその原因は自分が第九にいることだってわかってる以上、青木もいっぱいいっぱいだろうけど。

でも薪さんのがもっとキツいんだよ、いつまでも薪さんに縋ってんじゃねぇや、このへたれ!

やっぱり薪さんを守れるのは岡部さんしかいないわ(こればっかり)。

さてどのような想像を絶する悲劇が待っているのか……もう次の巻ですぱっと終わってくれていいですよ、玲子さん。読むの精神的にしんどいです(>_<)

(でもまだまだ終わりそうじゃないよね、この話)

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    まさかのベシュ刑事再登場!相変わらず惚れっぽいルパンが恋敵の若者と丁々発止。最初のルパンによる「まえがき」の内容に苦笑してしまいます。