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2009年3月 7日 (土)

『秘密』第6巻/清水玲子

(これまでの『秘密』関連の記事はこちら↓
『秘密』と“私の眼に映る世界”
清水玲子さんの『秘密』アニメ化!
アニメ『秘密』、関西では見られないのか?
『秘密』5巻/清水玲子

清水玲子さんの傑作マンガ『秘密』の第6巻が出ました。

今回は、岡部さんが「第九」に配属された時のお話です。

えっと、『秘密』を読んだことのない人のために一応説明しておきますと、このマンガの舞台は近未来。

死んだ人の脳が見ていた映像を「MRI」という装置で再現できる技術が開発され、その技術を使って犯罪被害者や加害者の脳を見、事件の真相を明らかにするのが「警視庁科学警察研究所 第九研究室」。

そこの室長が、上の表紙の手前に描かれている美青年、薪さん。

奥にいるメガネの男が部下の青木。

岡部さんも薪さんの部下で、「第九」の最古参。

……今回、岡部さんの話なのに、表紙に描かれていなくてお気の毒。なぜ青木なんだか……。

前の5巻の特別編も岡部さんのお話で、「やっぱり岡部さん、ええ人や~」っていうのがよくわかったんですけど、今回もね。

薪さんを守るのは岡部さんしかいないっ!

青木なんかとっととどっか行っちゃえっっっ、バカっ!!

って思える素敵なお話でした(笑)。

岡部さんは、第九の最古参の人間なんですが、実は第九発足時のメンバーは薪さん以外はみんなダメになってしまっているのですね。

凶悪犯の頭の中身を「MRI」で見たためにその狂気に感染し、2人は自殺、1人は廃人同然、そして残る1人は……薪さんが撃ち殺した。

もちろん正当防衛。その男・鈴木は狂気に駆られ、薪さんを襲おうとしたから。

薪さんにとって、鈴木は部下でもあり、親友でもあった。

その親友を自らの手で撃ち殺し、「第九」のメンバーとしてたった一人生き残った薪さんのもとに、新たに部下として岡部さんがやってくる……。

岡部さんって、捜査一課の凄腕の刑事さんだったのよ。知らなかった。

5巻の特別編でしっかり描いてもらうまでは、薪さんに傾倒しているちょっとおかしなおじさん、って感じやったから(笑)。

なんで岡部さんが薪さんに傾倒したか、なんで薪さんを守って一生第九にいるぞ!って思ったか……ってことが6巻を読むとわかります。

最初の薪さんの登場の仕方がほんと麗しくて、まだ「親友を撃ってから1か月も経っていない」手負いの獣の危うさ全開で……岡部さんじゃなくても骨抜きにされます(笑)。

いや~、もう、ほんと、薪さんファンにはたまらない。眼福眼福(爆)。

たまらないけど、薪さんの人生、ほんとにキツい。

薪さんが背負った十字架の重さを思うと……苦しくなります。

薪さんの心が安まる日はもう永遠に来ないんだろうな、って思えて。

いつまであの人の精神は保(も)つだろうか、と考えてしまう。

薪さんを支えるはずの青木は女にうつつを抜かしてるしね~。おかげで今回特別編ではひどい目に遭ってるよ。自業自得。薪さんより女を取った罰よ。

 

そして今回の事件も、やっぱりとっても哀しくて。

「介護」の問題と、そして「自己防衛のための幻覚」っていうのがキーになってるのね。

うちにも今年98歳になる義祖母がいるので、「介護」問題は切実。

そして「幻覚」も、妄想を生きる糧にしている私には人ごとと思えなくて。

だって、「小説を書く」なんていうの、毎日幻覚見てるのとおんなじことだから。

集中して書いてると、ほんと、冗談じゃなく家事に戻った時とかに「なんで私、こんなことしてんだろ?」って気になるから。

「私はさっきまで異世界で闘っていたはずなのに」って。

「小説」という形で「外」に出しているから「幻覚」じゃなくすんでいるけど、これがただ頭の中で「物語を見ているだけ」だったらほんと、「頭おかしいんじゃないの?」だもん。

私は幸い「自己防衛のために多重人格になったり幻覚を見たりする」ってほどのストレスを受けたことはなく、平穏な人生を生きさせてもらってるんだけど、それでも小説を書くことで精神のバランスを保てたな、って思うことはある。

嫌なことや辛いことがあっても、書いて吐き出せば落ちつけるし、「物語」の中で色んな感情を昇華することができるから。

今回の事件で、自分の心を守るために幻覚を見ていた女性を、周囲は「変人」「狂ってる」としか見ない。

そして、「幻覚に逃げるなんてよくないから、正常に戻してあげよう」という周囲の“善意”によって、悲劇の引き金が引かれてしまう。

正常とか異常とか、何をもって判断するのか。

彼女が幻覚に逃げ込まざるをえなかった辛い現実を変えることなく、ただ彼女だけを“現実”に引き戻そうとする。それは果たして“善”なのか。

考えさせられます。

本人が幸せで、周りにも迷惑をかけていないのなら、幻覚の中に生きていたっていいんじゃないか……。

本人が幸せで、周りにも迷惑をかけていないのなら、お金にならない小説を書いていたっていいんじゃないか……(笑)。

 

でも、もし「MRI」技術が本当に実現して、私の「脳」を見られたりしたら大変だよ。もう妄想だらけで(爆)。

頭の中の“物語”が投影できればわざわざ“文章”にしなくていいし、登場人物はこんな顔なのよ、っていうのも一目瞭然ではあるけど、でも、やっぱり、ヤバい。

決して“文章”にはしない秘密の妄想がいっぱいあるもんな(笑)。

……それにつけても薪さん、これからまだまだキツい人生を送っていかれるのかしら。玲子さん、薪さんのこと、あんまりいじめないでください……。

 

あ、白泉社のサイトで6巻の中身がちょっとだけ見られます。誤植等があったおわびとして、「正しい画面」というのが載っているの。

薪さんが見られるよん♪ (→こちら

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